2022年7月30日土曜日

土量計算のポイント(2/2)

複数のフェーズ

複数のフェーズにわたって土量計算を行う場合を考えてみましょう。フェーズ1→フェーズ2→フェーズ3の順にだんだん地盤を盛り上げていき、各フェーズでの盛土の量を算定します。

次の図のような地盤1~3を作成します。地盤2と地盤3は全く同じ位置と大きさで、高さのみ異なる10m四方(100㎡)の地盤で高さの差は1mです。

地盤を作成しフェーズを分ける

それぞれの構築フェーズをフェーズ1~3、解体フェーズはすべて「なし」とします。この時の地盤2の土量は次のようになります。

地盤2は土量が計算される
ところが地盤3の土量は計算されません。
地盤3は土量は計算されない

この状態をフェーズと重ね合わせて模式図をつくるとこのようになります。


地盤2を考えてみましょう。地盤2の作成時(フェーズ2)には、それ以前に作成された地盤で存在している地盤は地盤1のみなので、計算対象が確定します。(矢印①)

一方、地盤3は作成時(フェーズ3)時点で、それ以前に作成された地盤で存在している地盤が地盤1(矢印②)と地盤2(矢印③)が存在します。そのため、土量を計算する対象が確定できないので、土量が計算されません。

これを修正するには、各地盤の作成フェーズで、差分を計測する地盤を確定しなければなりません。この場合は、模式図の③の矢印がなくなれば確定します。つまり、地盤1をフェーズ2で解体します。

地盤1をフェーズ2で解体する
地盤1の解体フェーズをフェーズ2に設定すると、地盤3のパラメータは次のようになります。
地盤3は地盤2との差分を計算する

地盤3が作成されるフェーズ3の段階では地盤1も地盤2も存在するので、その最も古いフェーズで作成された地盤1との差を計測しています。

土量を計算するには、比較対象となる地盤を、土量計算をする地盤の作成フェーズで解体することで、対象をひとつだけに確定することが必要です。

それぞれの地盤をフェーズ間でリレーするように設定する

まとめ

土量計算に必要な条件は以下の3点となります。

  1. 土量を計測する地盤は、比較対象となる地盤の範囲内にある。
  2. 土量を計測する地盤の構築フェーズは、比較対象となる地盤よりも新しいフェーズであること。
  3. 比較対象となる地盤は、土量を計測する地盤の構築フェーズで解体されること。

2022年7月23日土曜日

土量計算のポイント(1/2)

地盤の盛土切土プロパティ

地盤を作成して切土・盛土の計算ができることは皆さんご存じだと思います。でもこのプロパティは表示されたりされなかったりします。

土量プロパティが表示される条件は?

どういった条件で土量計算ができるのかを確かめてみましょう。

フェーズと範囲が重要

土量計算を行う条件は次の2点です。

  1. 既存地盤の構築フェーズが計画地盤の構築フェーズの前であること。
  2. 計画地盤は既存地盤の範囲内にあること。

いたってシンプルな条件ですので、実際に地盤を作成して土量計算を行ってみましょう。

手順1 既存地盤の作成

  1. 建築テンプレートで新しいプロジェクトを開始
    1. 建築テンプレートにはあらかじめフェーズが設定されています。このフェーズを利用します。

  2. 平面図:設計GLを開く
  3. ビューのプロパティで
    1. 「ビュー範囲」で下とビューの奥行を無制限に設定
    2. これは見やすくするための処置であり土量計算には必須ではありません。
  4. マス&外構タブ>外構作成パネル>地形で任意の形状の地盤を作成
    1. だいたい30m角ぐらいの地盤を高さ0mで作成します。
    2. プロパティ「名前」を既存地盤に設定
      だいたい30m角ぐらいの地盤を作成し名前を「既存地盤」とする。

手順2 計画地盤の作成

  1. 同じく平面図:設計GLを開く
  2. 計算結果の確認をわかりやすくするために正確に10m角の地盤を作成します。
    1. 注釈タブ>詳細パネル>詳細線分
    2. 長方形ツールを使って、10mの正方形を既存地盤の内側に描画
  3. マス&外構タブ>外構作成パネル>地形
    1. 作成した10m角の正方形の4つの頂点に高さ1mの点を配置
    2. プロパティ「名前」を計画地盤に設定
      計画地盤を高さ1mで作成する


手順3 土量計算

今のままでは既存地盤も計画地盤も構築フェーズが新しい建設なので、土量計算は行われません。計画地盤のフェーズを変更して土量計算をしてみましょう。
  1. 計画地盤(10m角の地盤)を選択し、土量計算のプロパティが表示されないことを確認。
  2. 既存地盤を選択し、構築フェーズを既設に設定
    既存地盤の構築フェーズを「既設」に設定

  3. 計画地盤を選択し、土量関連のプロパティが表示されていることを確認します。
    計画地盤に土量関連プロパティが表示されます。

    1. 10m角の地盤を高さ1mで作成したので、盛り土が100㎥、切土が0㎥となります。
  4. 計画地盤を選択し、サーフェスを編集
    1. 上側の頂点ふたつの高さを-1000とします。
  5. 計画地盤を選択し、土量関連のプロパティを確認します。
    切土盛土が同じ量なので正味切土/盛土は±0に

    1. 計画地盤の半分が既存地盤に埋もれたようになるので、切土と盛土が同じ値となります。
  6. 計画地盤を移動して、一部を既存地盤の外側に出します。
    計画地盤の一部を既存地盤の外に出す。

  7. 計画地盤を選択し、土量関連のプロパティが表示されなくなっていることを確認します。
    土量関連プロパティがなくなった!

  8. UNDOで元の位置に戻します。

まとめ

土量計算のポイントは以下の二つです。
  1. ポイント1:構築フェーズ
    • 比較元となる既存地盤の構築フェーズを計画地盤の構築フェーズより前のフェーズに設定する。
  2. ポイント2:計画地盤の範囲
    • 計画地盤は比較元の既存地盤の内側になければならない。

2022年7月16日土曜日

Civil3D+InfraWorks+Revit+国土地理院(4/4)

Revitのデータを配置する

RevitのデータをInfraworksに乗せるには二つの方法があります。

  • Autodesk 360を使用してクラウドで変換する方法
  • Navisworks Manageを使用してローカルで変換する方法

Infraworks2023での既定値はAutodesk 360を使用する方法ですが、Navisworks ManageがあればAutodesk 360のアカウントがなくてもInfraworksへの読み込みは可能です。

RevitデータをInfraworksに乗せてみよう

Autodesk 360で変換

Revitでの準備

  1. 既定の3Dビュー{3D}を開きます。
  2. Infraworksに表示するときに、不要になる要素やカテゴリ(植栽・地盤・外構・駐車場など)を非表示とします。
    {3D}でInfraworks上で不要な要素を非表示にする

  3. 保存して閉じます。(開いているとInfraworksで読み込むことができません。)

Infraworksに読み込む

  1. 配置する敷地周辺を拡大。
    • 既存の建物がある場合は、選択してDeleteキーで削除する
      既存建物を削除

  2. 管理タブ>コンテンツパネル>データソース
  3. データソースパネル>ファイル データ ソースを追加>Autodesk Revit
    1. 雲のマークのアイコンが表示されていたら、Autodesk360を経由した変換を意味しています。

  4. ファイルを選択して開く。
    1. いくつか警告が表示されますが気にせず[閉じる]で進みます。
  5. データソースパネルの建物フォルダに表示されたアイテムをダブルクリック
    1. 座標系:XY-IFT
    2. 位置の座標系:JGD2011-01
    3. 2Dの中心
    4. 対話的な配置を実行…をクリック
    5. だいたいの位置をダブルクリック
    6. 再びダイアログボックスが表示されるので[閉じて再表示]
      ギズモを使って回転、移動を行う

  6. 配置された要素を選択し、表示されたギズモを使って、回転、移動を行い適切な位置に配置する。
    位置を調整する

Navisworksで変換

Autodesk360のアカウントがない場合は、Navisworks Manageを使用します。

  1. 画面右上の「アプリケーションオプション」をクリック
  2. データ読込をクリック
    1. Navisworksベースのローカル読込にチェックを入れる

  3. OK
読み込む方法は同じです。ファイルデータソースを追加▼>Autodesk Revitのアイコンが次のようになります。

以上の手順でRevitのデータをInfraworksに取り込むことができます。あとはInfraworksの機能で植栽を配置したり、Ctrl+7で日付や時間を変更するなどして、様々なシミュレーションを行うことができるようになります。
日付や時間を変更することも可能


皆さんも、ご自身の計画建物をInfraworksを使って周辺環境と合わせてみてはいかがでしょうか?

2022年7月9日土曜日

Civil3D+InfraWorks+Revit+国土地理院(3/4)

周辺建物データの取り込み

基盤地図情報から周辺建物と鉄道軌道の情報をダウンロードしてInfraworks上に表示してみます。

周辺建物と軌道情報を取り込む

周辺建物と軌道の情報を取得

  1. 基盤地図情報のサイトを開き、基本項目の「ファイル選択へ」をクリック。

  2. 基本項目タブを選択し、全項目のチェックを解除、「建物の外周線」「軌道の中心線」にチェックを入れ、地図上で選択を選ぶ。

  3. 対象となる地域を拡大します。この説明では長崎市周辺を拡大します。
    1. 492906を選択
    2. 市街地はデータ量が多くなるのでひと区画ずつ実行したほうが無難です。
    3. ダウンロードファイル確認へをクリック。
  4. ダウンロードボタンを押してファイルをダウンロードします。
    ダウンロードボタンでファイルをダウンロード

シェープファイルに変換

ダウンロードしたファイルを基盤地図情報ビューアでシェープファイルに変換します。
  1. 基盤地図情報ビューアを起動
  2. 新規作成をクリック
    1. すべて解除をいったんクリック
    2. 追加を押して、ダウンロードしたZIPファイルを選択。
    3. プロジェクトのタイトルと保存先を指定
    4. OK

  3. エクスポート>エクスポート
    1. 変換種別を「シェープファイル」
    2. 変換する要素として「建築物」と「軌道の中心線」に☑
    3. 全データ領域を出力
    4. 出力先フォルダを指定
    5. OK

  4. 出力が終わると次のようなダイアログボックスが表示されますのでOKをクリック。
    変換終了を示すダイアログボックスが表示される

周辺建物をInfraworksに取り込む

シェープファイルをInfraworksに取り込みます。
  1. 管理タブ>コンテンツパネル>データソース
  2. データソースパネル>ファイルデータソースを追加▼>SHP
    SHPとはシェープファイルのこと

  3. ○○-建築物.shpを選択し、よみこまれた項目を右クリック>設定

    1. タイプの▼から「建物」を選択。
    2. 共通タブで、スタイルの基本カラーと屋根マテリアルがrandomFacadeColor、randomRoofColorであることを確認。
    3. 屋根の高さに10m(変更してもOK)
    4. 閉じて再表示
    5. 建物がランダムな色で取り込まれました。

鉄道軌道をInfraworksに取り込む

  1. データソースパネル>ファイルデータソースを追加▼>SHP
  2. ○○-軌道の中心線.shpを指定
  3. 取り込んだ項目(フィーチャといいます)をダブルクリック

    1. タイプを鉄道
    2. スタイルの鉛筆アイコンをクリックし、Railwayを選択
    3. 閉じて再表示
軌道を確認してください。

建物高さの調整

建物は一律で10mで取り込まれています。高さは個別に調整することが可能です。

  1. 任意の周辺建物を選択してハンドルを表示
    建物を選択してハンドルを表示

  2. 上向きの水色の矢印を選択(赤くなります)
    1. ドラッグするか
    2. 高さを入力します。

  3. 建物パネルに表示されるルールスタイルから任意のファサードを選択することもできます。
    ファサードスタイルも指定できる

次回はいよいよRevitのデータを取り込みます。

2022年7月2日土曜日

Civil3D+InfraWorks+Revit+国土地理院(2/4)

航空写真を張り込む

読み込んだ地形に航空写真を張り込みましょう。写真を張り込むことで明確に地図上の位置が把握できるようになります。単なる写真ではなく、地理的位置をもった写真を取得すれば位置合わせも簡単です。

地形に写真を張り込んでみよう!

地理院地図

ここでも国土地理院のサービスが無料で利用できます。それが「地理院地図」です。

地理院地図。本当に国土地理院は神

  1. 地理院地図を開き、対象の地域(ここでは長崎市)を拡大。
  2. 左上の地図アイコンをクリックし、写真を選択。

  3. 右上の「共有」をクリックし、左から三番目の画像アイコンをクリック。

  4. 表示されている範囲全体を選択
    1. または範囲を固定を選択すると選択枠が表示されます。
    2. Revitデータを配置する敷地が真ん中になるようにするとよいです。
    3. OKを押す
  5. 画像を保存 ワールドファイルを保存の両方をクリックしてファイルを保存します。
    両方必要です!

    1. 画像としてpngファイル、ワールドファイルとしてpgwファイルがダウンロードできます。
  6. ダウンロードした二つのファイルを適切なフォルダに移動しておきます。

Infraworksに画像を取り込む

前回作成した地形のデータに画像を張り込みます。
  1. 管理タブ>コンテンツパネル>データソース でデータソースパネルを開きます。

  2. ファイルデータソースを追加をクリックしRasterを選択

  3. ファイルの種類を「すべてのファイル(*.*)」として、地理院地図からダウンロードしたpngファイルとpgwファイル両方を選択し、開く。
    すべてのファイルを選択しpngとpgwを選択

  4. データソースパネルの地表イメージフォルダ内の取り込んだファイル名をダブルクリックまたは右クリックして設定を選択
    設定を選択

  5. 地理的位置タブの座標系に「WGS84.PseudoMercator」と入力
    Mercatorはメルカトル図法のメルカトルです

  6. 閉じて再表示をクリック
    写真を地形に複数枚張り付けたところ

何枚でも張り込めるので、複数回同じ作業してもOKです。特にRevitを配置する敷地周辺は拡大た画像を張り込んで高精細にしておくとよいです。
地図を拡大して画像を取得すれば高精細に

範囲を切り取る

表示する範囲をトリミングします。
  1. ビューキューブを使って真上から表示。
  2. 管理タブ>モデルパネル▼>モデルプロパティ
  3. 範囲のモデル全体を使用のチェックを外す。
  4. 対話的に定義のBBOXをクリック

  5. 左上のコーナーをクリックし、右下のコーナーをダブルクリック
    コーナー1をクリック、コーナー2をダブルクリック

  6. モデルプロパティダイアログボックスが再び表示されるのでOKをクリック
これでトリミングができました。

次回は建物や軌道を表示してみます。