2019年3月24日日曜日

Revit Modeling Plate

Revit Modeling Plate

普段はあまり気にしないのですが、建物と土地(地球)の関係はRevitにおいてどういった概念でとらえられているのでしょうか?もし仮に無限のコンピューティングパワーと無限の労力があれば、Revit上に地球を丸ごと再現することは可能でしょうか?

おそらく答えはNoです。

なぜなら、Revitのモデリング空間は直行座標系で、当然ながらXY平面は平たんです。一方地球は球体です。ある点においては正確ですが、そのある点から遠ざかるにつれて正確性は低くなり、ついにはモデリングができなくなってしまうでしょう。
中心から離れるほど地球上の座標は不正確になる

上の図でマゼンタで示されたRevitモデルが構築される平面を仮に「Revit Modeling Plate (RMP)」と呼ぶことにします。通常私たちはこのRMPの上に直行座標系を用いてモデルを作成しています。
Revit上ではモデルの大きさに制限はありませんが、推奨される限度というものがあり、だいたい直径20マイル(33km)を超えると、正確性は保証されていません。(20マイルの壁)このRMPの推奨される大きさが直径20マイル(33km)ということになります。

座標

Revitの座標系はやや複雑です。はっきりと名前がついてはいませんが、以下の3つの概念を持っています。
  1. 地球座標系
  2. プロジェクトの北座標系(内部基準点が原点:プログラムで取得可能な座標値)
  3. 真北座標系(1の地球座標系と基本的には同じ)
概念としては下の図のように球体としての「地球」と、円盤状の「Revit Modeling Plate」がある一点で接した状態がRevitの座標系です。
地球の上に半径20マイルの円盤が乗っているイメージ

RMPの原点はプロジェクトの北座標系の原点で、常にRMPの中心にあります。プログラムやダイナモで取得できる座標はこのプロジェクトの北座標系の値です。この原点を内部基準点と呼びます。内部基準点はRMPの中心に固定されていて、移動することはできません。

真北座標系

RMPにはもうひとつ真北座標系があります。これは敷地コマンドにより、複数を切り替えることができます。真北座標なので、Yは北極を指していることになります。ですから、原則としては地球座標系と基本的に同じであるともいえます。
真北座標


プロジェクト基準点と測量点

これらの座標系と「測量点」、「プロジェクト基準点」および「クリップ」の関係を考えてみます。
基本的には測量点は地球に、プロジェクト基準点はRMP上に存在します。
測量点とプロジェクト基準点


プロジェクト基準点+クリップ=プロジェクトの移動


プロジェクト基準点を選択するとクリップのマークが表示されます。このクリップはON/OFFができます。OFFの時はRMP上を自由に移動しますが、ONにするとRMPにクリップ(刺さるイメージ)します。プロジェクト基準点のクリップをONにしたまま移動すると、RMPに突き刺さっている状態で動かすことになるので、RMP全体が地球上を移動します。これがプロジェクトの移動です。
プロジェクトの移動:測量点は地球に「刺さっている」ので、移動しない。

このとき測量点は移動しないことに注目してください。測量点は地球座標系にあるため、RMPが移動しても影響を受けず、地球上の指定した点に残ります。
このとき、移動距離が20マイル(33km)を超えると、距離の正確性は上記の地球(球体)とRMP(平面)の関係で、正確性が徐々に失われていきます。

測量点+クリップ=測量基準点の移動

測量点もまたクリップのON/OFFを切り替えることができます。クリップしていない場合は、測量基準点は地球上を移動せず、0,0と指定した位置にとどまり、移動した測量点は測量基準点からの距離を表示します。
クリップを外すと、測量基準点は移動しない。
測量点をクリップすると測量点基準点が地球上を移動します。
クリップすると測量基準点(0,0)が移動する
測量点のクリップは「測量基準点(0,0)にクリップ」しているのです。

真北の回転

真北を回転コマンド([管理]タブ>[プロジェクトの位置]パネル>[位置▼]>[真北を回転)]を使ったとき、思った方向と逆の方向に真北が回転してしまった、という経験をお持ちではないでしょうか?この動きも地球とRMPの関係を考えれば納得がいきます。
下の図は標準添付のテンプレートでプロジェクトを開始したときの状況を示しています。このとき、プロジェクトの北と真北の方向は一致しています。
最初はプロジェクトの北と真北は一致している
真北を設定するために[真北を回転]で真北を10時の方向へ回転させるとします。注意すべきことはこのコマンドが地球ではなく、RMPを回転させる、ということです。
もしこのとき12時の方向から10時の方向へ回転を指定すると、RMPが反時計回りに回転するので真北の位置は2時の方向になってしまいます。
真北が2時の方向になってしまいます。
真北をプロジェクトの北からみて、10時の方向にするには、RMPを12時の方向から2時の方向に回転させる必要があります。
真北が10時の方向になります。

真北を回転する場合も、測量点は地球に刺さっているので移動しません。ところがRevitのUIからはプロジェクトの北が常に画面の上を向いているので、測量点が移動したようにみえるのです。


いかがでしたか?プロジェクト基準点、測量点、真北、クリップの関係がつかめていただけたでしょうか?地球と建物の関係を考えてみるのも、なかなか壮大で面白いものですね。