2025年1月25日土曜日

Roombook入門(4)~要素のマテリアルで拾う

マテリアルで拾う

今までは仕上セットのマテリアルを部屋の仕上として適用していましたが、次は床壁天井のレイヤ構造にあるマテリアルを仕上として利用する方法をご紹介します。

レイヤ構造の作り方

床壁天井タイプのレイヤ構造を構成するにあたり重要な点は、レイヤの機能「仕上1」「仕上2」のマテリアルが仕上として拾われるということです。「下地」や「断熱」「構造」のレイヤは仕上として抽出されません。

また、表面にペイントしたマテリアルも有効です。したがって、ビニルクロスや塗装など厚さを0mmとして考えたいマテリアルは床壁天井の面にペイントしておけばOKです。

次のようなレイヤ構成の壁を考えてみましょう。外側と内側の表面にはビニルクロスのマテリアルをペイントしておきます。


この壁タイプを次の図の壁に設定します。部屋A側が外側です。


Calculate Room Quantitiesの[Calculate]ボタンをクリックし、計算が終わったら[View/Edit Result...]ボタンを押します。

外側はGBのレイヤが「下地」になっているため、表面にペイントしたビニルクロスのみが拾われています。GBは全く拾われません。


一方、内側はGBのレイヤが「仕上2」になっているので、表面のビニルクロスとGBが二層とも拾われるということになります。


対象レイヤの設定

拾いの対象となるマテリアルの設定は、Calculate Room Quantitiesダイアログボックスの[Consider materials]の設定で変更できます。


  • Finish Materials:仕上1、仕上2のレイヤのみが対象
  • All Materials:反対側の躯体境界までのすべてのレイヤが対象
All Materialsでは次の図のようにすべてのレイヤが拾われるのですが、あまり実用的とは言えません。実質この選択肢はFinish Materialsを選ぶしかないと思われます。

この条件を守って床壁天井のレイヤ設定を行えば、床壁天井の拾いはまずまずの精度で取得可能です。

Room Circumustancesとは

開口部は減算されていない

Room Circumustanceとは「部屋の周囲」ですから幅木や廻り縁のようなものだと考えられますが、現状ではドア開口部をひき去るなどの減算処置はされていませんので数値を使用するには注意が必要です。

要素は何が拾われるのか?

床壁天井はその要素が算出対象ですが、Room Circumustanceは今のところ何が計算対象なのかはよくわかりません。ただByRoomで拾う場合はマテリアルを拾うので、幅木ごとに仕上セットをそろえておくと役に立つかもしれません。
幅木と廻縁のみマテリアルを指定

このようにすると、とりあえず数量は出ます。

廻縁は問題なさそうですが、幅木を拾う際に開口部をひき去ることにこだわるならば、幅木を壁スイープで作成して、直接長さを拾うほうがよいでしょう。

2025年1月18日土曜日

Roombook入門(3)~どう拾ったのか確かめる

根拠の視覚化

Roombookには仕上数量がどのように拾われたのかを視覚化し、修正する手段が提供されています。今回は少し複雑な部屋を作成してその手順を確認します。

天井段差がある部屋

次のモデルのように、天井の隅に梁型がある部屋の仕上はどのように拾われるのかを見ていきましょう。


Quantificationタブ>Roombook Extensionパネル>Surface Materials▼>Apply Surface Material to Room で「部屋A」にHabitable Room-Carpetを割り当てます。

次にQuantificationタブ>Roombook Extensionパネル>Calculate Room Quantitiesをクリックし、Caliculateボタンをクリックします。

すると[Calculate]ボタンの右隣の[View/Edit Results...]ボタンが押せるようになるので、クリックします。


すると次のようなダイアログボックスが表示されます。


では、どのように仕上面を認識しているのか、壁を例に確認してみましょう。まず、Roomsグループの[+](Expand All)で部屋の各面を展開します。


次に最下位にあるTop Rail Faceを選択すると、右側のプレビューウィンドウで、該当する壁のみが表示され、該当面がピンク色に、部屋が青色で表示されます。


Optionsを展開して、[Hilight Filter]の値を[SelectedOnly]にすると、選択した面のみが表示されます。

ここからわかることは、壁TopRail1からは1つの面Top Rail Face 1のみが抽出されているということです。しかしこれでは天井裏(梁型)の部分も面積に加算されてしまっています。一見上下二つの面に分かれているようですが、二つのループを持つ一つの面として面積が算出されます。これはちょっと気になりますよね。。。。

面を分割する

Roombookは要素の「面」に着目したアプリケーションです。「要素の面ごとに拾う」という仕組みなので、壁面をあらかじめ天井面で分割(Split)しておくと、それぞれの面で拾ってくれます。
修正タブ>ジオメトリパネル>面を分割を使って、壁を二つの領域に分割します。

そして同様の手順で、算出状況を確認してみると、面が二つに分かれています。

そして、不要な面を選択して、Add/Ignore surfacesグループの[-](Ignore face/surface)ボタンをおして、算出から除外します。

Roombookの拾い方について

今回見てきたようにRoombookは単純な段差のない天井をもつ部屋であれば効果は高いのですが、梁型などの天井段差も忠実に算出しようとすると、こうした調整が必要になります。
Roombookの算出自体はとても高速なので、あとはこうした誤差をどう判断するかです。

2025年1月11日土曜日

Roombook入門(2)~仕上セットの自作

仕上セットを自作する

前回は部屋ごとに床壁天井の仕上セットを割り当てて数量を拾いました。今回はこのセットを自作してみます。事務室の仕上を想定し床壁天井の下地と仕上として、次のような組み合わせを作ってみましょう。

手順は

  1. 下地と仕上のマテリアルの作成
  2. 仕上セット(Roombook Materialsファミリのタイプ)を作成
の2ステップです。

Surface Material

  1. Quantification タブ>Roombook Extension パネル>Surface Materials▼>Edit surface Material をクリック
  2. 次のようなダイアログボックスが表示されます。



このダイアログボックスでは、
  • Wall Surface
  • Floor Surface
  • Ceiling Surface
  • Room Circumference(幅木や腰壁)
の各仕上を設定できます。

Material Source

グループの Material Sourceは[ByElement]または[Custom]を選択します。
  • ByElement:モデルからマテリアルを取得する
  • Custon:モデルのマテリアルは無視して、Materialで指定する。
Typeを「Habitable Room-Carpet」(Habitable Room=居室)に変更して、Wall SurfaceのMaterialの[...]をクリックします。

次のようなダイアログボックスが表示されます。

このダイアログボックスでは、いわゆる「下地」「仕上」を複層構造として指定できます。左のマテリアルのリストから[>>]ボタンで下地と仕上の組み合わせを作成します。この例では「石膏ボード下地に壁紙」を表現しています。

新しい仕上セットを作るには?

独自の仕上セットを作るには、まずは必要なマテリアル(管理タブ>設定パネル>マテリアル)を登録したうえで、Quantification タブ>Roombook Extension パネル>Surface Materials▼>Edit surface Material をクリックし、Duplicate the typeボタンを押します。

Duplicateダイアログで名前を設定してOK

仕上セットの設定を他のプロジェクトに転送するには?

作成した仕上セットはファミリに登録されています。プロジェクトブラウザ>ファミリ>注釈記号>Roombook Materials を名前を付けて保存します。名前は何でも構いません。
  1. プロジェクトブラウザ>ファミリ>注釈記号>Roombook Materials を右クリック>保存
  2. 任意の名前を付けて任意の位置に保存
    • ここでは仮にMy Roombook Materials としてデスクトップに保存します。
  3. 別のプロジェクトを作成または開く
  4. Quantification タブ>Roombook Extension パネル>Surface Materials▼>Edit surface Material をクリック
  5. Load...ボタンをクリックし、2で保存したファイル(My Roombook Materials)を選択

  6. FamilyがMy Roombook Materialsになる。
このように注釈ファミリを保存して、ロードすることであらゆるプロジェクトに仕上セットを転送することができます。

2025年1月4日土曜日

RoomBook入門(1)

RoomBookをインストールしよう

改めてRoomBookを少し詳しく取り上げてみます。Roombook/Areabook/Buildingbookはユーザーアカウントのmanage.autodesk.comでRevitの拡張機能としてダウンロード&インストール可能です。
Revitの拡張機能



Roombook/Areabook/Buildingbookをダウンロード

Roombookで何ができるのか

Roombookは「内装数量拾い」のためのツールです。まずは簡単なモデルを作成して、どんなふうに拾えるのか試してみましょう。

簡略な数量算出の手順

建築テンプレートを使ってプロジェクトを新規作成し、次のような二つ部屋を作成します。使用する要素タイプや部屋の広さは任意ですが、床をFL+0、天井を 部屋AはFL+2600、部屋BはFL+2800で作成しておきます。
適当にドアや窓も追加しましょう。
要素タイプは任意、天井高に差をつけておく

部屋に仕上を割り当てる

数量算出の方法は
  • ByRoom
  • ByElement
の二つの方法があります。
ByRoomは部屋単位で床壁天井の仕上のセットを割り当てて数量を求めます。
ByElementは床壁天井の要素がもつマテリアルの数量を拾います。
まずは簡単にByRoomで求めてみます。
  1. Quantificationタブ>Roombook Extensionパネル>Surface Materials▼>Apply Surface Material to Rooms
    1. 作成した部屋のリストが表示されます。
  2. Material Typeの列で、下の図のようにそれぞれの部屋にHabitable Room-Carpetd、Kitchenを割り当てます。


  3. OK

数量を算出する

  1. Quantificationタブ>Roombook Extensionパネル>Calculate Room Quantities

    • ダイアログボックスが開きます。細かな設定は後ほど説明しますが、まずは規定値のまま使用してみましょう。
    • Export Format : MS Excel
    • Export Template : ENU_Roombook_international_Standard.xlt
    • であることだけ確認して[Calculate]ボタンを押します。
  2. 計算が終わると、平面ビュー上に数字のタグが表示されます。続いて[Export]ボタンを押してください。


  3. Excelが立上り、計算結果が表示されます。
    Excelに結果が出力される


  4. OKでダイアログボックスを閉じます。

どのように拾ったのか?

ワークシート:Wall_Surfacesを見てみましょう。部屋Aと部屋Bのそれぞれの内訳が表示されています。注目ポイントは
  • Surface Material列には仕上が表示されています。この仕上は「部屋に仕上を割り当てる」のステップで指定した仕上です。ちゃんと複層構造で計上されています。例えばWallPaperとPlaster(壁紙と石膏ボード)の組み合わせで拾ってますねー。

  • ID列はこの行がどの部分なのかを示しています。平面図に表示された番号はこのIDです。

  • +/-列で-の部分に注目してください。これは壁から差し引く開口部を示しています。

  • マテリアルごとに面積がまとめられています。

all_Room_Quantitiesシートには各仕上材の面積がまとめられています。

次回:仕上セットを設定する

ByRoomの仕上セットは自作することができます。次回は仕上セットの自作の方法を説明します。

2024年12月28日土曜日

ゆるめの仕上表チュートリアル

集計キーでゆるく仕上表をつくる!

だいぶ前に仕上表のチュートリアルを記事にしましたが、仕上表グループ番号とか整列番号とか設定が細かすぎるのが難点でした。ところがRevit2022から集計キーの適用範囲が広がったので、一度集計キーを使った記事も掲載しましたが、もっとユルめの室内仕上表チュートリアルを作ってみました。ぜひチャレンジしてみてください。

サンプルとするプロジェクトは、Revitに標準添付されているサンプル意匠.rvtです。出来上がった仕上表のイメージは次のようなものです。フィールドの数はとりあえず最小限にしてますが、やり方がわかれば項目を追加していくことができるでしょう。

こんな仕上表を作ってみます。

手順の概略

手順は
  1. 集計キーを作る
  2. 集計キーを部屋に割り当てる
の2ステップです。

集計キーを作る

サンプル意匠.rvtを任意の位置に名前を変えて保存し開いてください。ゆるゆる仕上表作成の第一歩は部屋カテゴリの集計キーを作成することです。集計キーとはインスタンスパラメータの値のセットを作るということです。
  1. 表示タブ>作成パネル>集計▼>集計表/数量

    1. カテゴリリストから部屋を選択
    2. 名前を「室内仕上表」に変更
    3. 集計キーを選択
    4. キー名は「部屋スタイル」のまま
    5. OK
  2. フィールドタブで、プロジェクトパラメータを作成・追加していきます。


    1. 新しいパラメータボタンを押す
    2. 名前:下地仕上 階
    3. データタイプ:文字
    4. パラメータグループ:構成

  3. 同じ要領で床壁天井の下地仕上のパラメータを追加しますが、データタイプをマルチラインテキストにします。
  4. OK
次のような集計表ができます。

ポイント1

下地仕上をマルチラインテキストとしたのは、型に縛られないゆるい入力を可能にするためです。自由に仕上下地を記述します。

ポイント2

今回は手軽さ優先でパラメータはプロジェクトパラメータとしてプロジェクトに挿入しましたが、タグに表示したりODBCデータ出力に対応したい場合は、共有パラメータを作成した上で同じ手順で集計キーに追加します。

下地と仕上の設定

それでは、平面図を見ながら仕上表を作成していきましょう。サンプルの仕上表によると、1階の風除室・エントランスホール・ELVホールは同じ仕上のようです。
  1. 室内仕上表集計表を開きます。
  2. 集計用/数量を修正タブ>行パネル>データ行を挿入 をクリック
    1. 1行追加されキー名は「1」となります。
  3. 下地仕上 階 に 1階 と入力
  4. 下地仕上 名前 のセル(C1)をクリックし、右端に表示される[...]をクリック
  5. 「文字を編集」ダイアログボックスで、
    風除室
    エントランスホール
    ELVホール

    と改行して3行の値を設定してOK。

  6. 下地仕上 床 のセルD1をクリックし、右端に表示される[...]をクリック
  7. 「文字を編集」ダイアログボックスで、床の仕上を入力
    モルタル下地
    花こう岩(t25)
    ジェットバーナー仕上

    と改行しながら床の下地と仕上を入力してOK

エクセルで入力する

この調子で残りの仕上を作成していってもいいのですが、Revitでの入力は少々面倒なので、エクセルを使ってゆるく作成みましょう。まずはフォーマットをCSVに書き出します。
  1. ファイルタブ>書き出し>レポート▶>集計
  2. 任意のフォルダを指定して保存
  3. 集計表を書き出し ダイアログボックスはそのままOK
CSVファイルが出力されたらエクセルで開いてください。そしてエクセルの機能を使って効率的に仕上のデータを作成していきます。セル内改行はおなじみの「ALT+ENTER」です。出来上がったらCSVファイルとして保存します。。。。とはいえ、全部入力していては時間がかかるので、こちらから入力済みのCSVデータをダウンロードしてください。

CSV専用のエディタを使おう

これからCSVファイルの各セルの値を、Revit集計表の「文字を編集」ダイアログボックスにコピぺするのですが、Excelのセル内改行の改行コードと、Revitのマルチラインテキストの改行コードが異なるため、Excelは使えません。
そこで、CSV専用のエディタを使用します。おすすめはフリーソフトの「Cassava Editor」です。こちらからダウンロードしてインストール(杓子定規ですがあくまで自己責任でお願いします。)してみてください。

完成したCSVデータをダウンロードしCassava Editorで開きます。これで準備完了です。

集計キーを増やす

Revitの室内仕上表集計表を開き、データ行を追加します。データ行はあと12行(全部で13行)必要です。
  1. 集計用/数量を修正タブ>行パネル>データ行を挿入 をクリックしキー名が13になるまで追加する

CSVからコピペする

あとは各セルの値をCSVファイルからコピペするだけです。Cassava Editorの場合、セルをクリックした時点でセル内のすべての文字が選択されるので、すぐにCTRL+Cでクリップボードにコピーします。

そしてRevitの当該セルをクリックしB列(下地仕上 階)ならばすぐにCTRL+V、その他はセルの右端の[...]をクリックして、文字列を編集ダイアログボックスにCTRL+Vでペーストします。

後はこの作業を繰り返して、すべての情報を埋めていきます。ここは少々時間がかかりますが頑張ってください。

部屋に仕上を割り当てる

仕上表はこれで完成です。どうでしょう。かなりゆるーく作れたのではないでしょうか?ただしこれは床壁天井の仕上の組み合わせ、仕上のセットを作っただけです。次は部屋にこの仕上セットを割り当てて、部屋自体に仕上の情報を設定します。

  1. プロジェクトブラウザでビュー>建築>10平面>平面図>平面図 1階を開く
  2. ビューのプロパティでビューテンプレートの編集ボタン(10_平面_標準)をクリック
    1. カラースキームのチェックを外しOK

  3. ビューのプロパティ:カラースキームのボタンをクリック

    1. スキームのカテゴリを部屋
    2. 任意のスタイルを一つ選択し、複製ボタン(左下のボタン)をクリック
    3. 名前を「部屋スタイル」としてOK
    4. タイトルを「部屋スタイル
    5. パラメータを「下地仕上 名前
    6. OK
  4. 平面図で部屋:風除室を選択
    1. プロパティ識別情報グループの一番下の部屋スタイルで1を選択

    2. 構成グループの各項目に値が設定されていることを確認します。マウスオーバーするとすべての内容が表示されます。

    3. 平面図でも色がついていることを確認します。

    4. すべての部屋に部屋スタイルを割り当てて、白抜きの部屋がなくなったら完成です。

    5. 同様に2階から上の部屋にも、部屋スタイルを割り当てましょう。

まとめ

集計キーで仕上表を作り、その内容を部屋に割り当てる、というプロセスにより仕上を確実に部屋に関連付けることができます。あとは集計表の体裁を整えてシートに張り付けるだけです。
集計キーに使用できるパラメータが増えたおかげで、仕上表の作成も随分と気楽になりました。前回は5回に及んだチュートリアルが1回で終わってしまいました。
仕上の情報は部屋のパラメータであり床壁天井のジオメトリとの直接の関係はありません。あくまでも仕上の概要を書いているだけですので、設計方針を書くようなものだと考えて、これくらいゆるいほうが実際の設計プロセスにはあいやすいのではないかと思います。