2025年1月18日土曜日

Roombook入門(3)~どう拾ったのか確かめる

根拠の視覚化

Roombookには仕上数量がどのように拾われたのかを視覚化し、修正する手段が提供されています。今回は少し複雑な部屋を作成してその手順を確認します。

天井段差がある部屋

次のモデルのように、天井の隅に梁型がある部屋の仕上はどのように拾われるのかを見ていきましょう。


Quantificationタブ>Roombook Extensionパネル>Surface Materials▼>Apply Surface Material to Room で「部屋A」にHabitable Room-Carpetを割り当てます。

次にQuantificationタブ>Roombook Extensionパネル>Calculate Room Quantitiesをクリックし、Caliculateボタンをクリックします。

すると[Calculate]ボタンの右隣の[View/Edit Results...]ボタンが押せるようになるので、クリックします。


すると次のようなダイアログボックスが表示されます。


では、どのように仕上面を認識しているのか、壁を例に確認してみましょう。まず、Roomsグループの[+](Expand All)で部屋の各面を展開します。


次に最下位にあるTop Rail Faceを選択すると、右側のプレビューウィンドウで、該当する壁のみが表示され、該当面がピンク色に、部屋が青色で表示されます。


Optionsを展開して、[Hilight Filter]の値を[SelectedOnly]にすると、選択した面のみが表示されます。

ここからわかることは、壁TopRail1からは1つの面Top Rail Face 1のみが抽出されているということです。しかしこれでは天井裏(梁型)の部分も面積に加算されてしまっています。一見上下二つの面に分かれているようですが、二つのループを持つ一つの面として面積が算出されます。これはちょっと気になりますよね。。。。

面を分割する

Roombookは要素の「面」に着目したアプリケーションです。「要素の面ごとに拾う」という仕組みなので、壁面をあらかじめ天井面で分割(Split)しておくと、それぞれの面で拾ってくれます。
修正タブ>ジオメトリパネル>面を分割を使って、壁を二つの領域に分割します。

そして同様の手順で、算出状況を確認してみると、面が二つに分かれています。

そして、不要な面を選択して、Add/Ignore surfacesグループの[-](Ignore face/surface)ボタンをおして、算出から除外します。

Roombookの拾い方について

今回見てきたようにRoombookは単純な段差のない天井をもつ部屋であれば効果は高いのですが、梁型などの天井段差も忠実に算出しようとすると、こうした調整が必要になります。
Roombookの算出自体はとても高速なので、あとはこうした誤差をどう判断するかです。

2025年1月11日土曜日

Roombook入門(2)~仕上セットの自作

仕上セットを自作する

前回は部屋ごとに床壁天井の仕上セットを割り当てて数量を拾いました。今回はこのセットを自作してみます。事務室の仕上を想定し床壁天井の下地と仕上として、次のような組み合わせを作ってみましょう。

手順は

  1. 下地と仕上のマテリアルの作成
  2. 仕上セット(Roombook Materialsファミリのタイプ)を作成
の2ステップです。

Surface Material

  1. Quantification タブ>Roombook Extension パネル>Surface Materials▼>Edit surface Material をクリック
  2. 次のようなダイアログボックスが表示されます。



このダイアログボックスでは、
  • Wall Surface
  • Floor Surface
  • Ceiling Surface
  • Room Circumference(幅木や腰壁)
の各仕上を設定できます。

Material Source

グループの Material Sourceは[ByElement]または[Custom]を選択します。
  • ByElement:モデルからマテリアルを取得する
  • Custon:モデルのマテリアルは無視して、Materialで指定する。
Typeを「Habitable Room-Carpet」(Habitable Room=居室)に変更して、Wall SurfaceのMaterialの[...]をクリックします。

次のようなダイアログボックスが表示されます。

このダイアログボックスでは、いわゆる「下地」「仕上」を複層構造として指定できます。左のマテリアルのリストから[>>]ボタンで下地と仕上の組み合わせを作成します。この例では「石膏ボード下地に壁紙」を表現しています。

新しい仕上セットを作るには?

独自の仕上セットを作るには、まずは必要なマテリアル(管理タブ>設定パネル>マテリアル)を登録したうえで、Quantification タブ>Roombook Extension パネル>Surface Materials▼>Edit surface Material をクリックし、Duplicate the typeボタンを押します。

Duplicateダイアログで名前を設定してOK

仕上セットの設定を他のプロジェクトに転送するには?

作成した仕上セットはファミリに登録されています。プロジェクトブラウザ>ファミリ>注釈記号>Roombook Materials を名前を付けて保存します。名前は何でも構いません。
  1. プロジェクトブラウザ>ファミリ>注釈記号>Roombook Materials を右クリック>保存
  2. 任意の名前を付けて任意の位置に保存
    • ここでは仮にMy Roombook Materials としてデスクトップに保存します。
  3. 別のプロジェクトを作成または開く
  4. Quantification タブ>Roombook Extension パネル>Surface Materials▼>Edit surface Material をクリック
  5. Load...ボタンをクリックし、2で保存したファイル(My Roombook Materials)を選択

  6. FamilyがMy Roombook Materialsになる。
このように注釈ファミリを保存して、ロードすることであらゆるプロジェクトに仕上セットを転送することができます。

2025年1月4日土曜日

RoomBook入門(1)

RoomBookをインストールしよう

改めてRoomBookを少し詳しく取り上げてみます。Roombook/Areabook/Buildingbookはユーザーアカウントのmanage.autodesk.comでRevitの拡張機能としてダウンロード&インストール可能です。
Revitの拡張機能



Roombook/Areabook/Buildingbookをダウンロード

Roombookで何ができるのか

Roombookは「内装数量拾い」のためのツールです。まずは簡単なモデルを作成して、どんなふうに拾えるのか試してみましょう。

簡略な数量算出の手順

建築テンプレートを使ってプロジェクトを新規作成し、次のような二つ部屋を作成します。使用する要素タイプや部屋の広さは任意ですが、床をFL+0、天井を 部屋AはFL+2600、部屋BはFL+2800で作成しておきます。
適当にドアや窓も追加しましょう。
要素タイプは任意、天井高に差をつけておく

部屋に仕上を割り当てる

数量算出の方法は
  • ByRoom
  • ByElement
の二つの方法があります。
ByRoomは部屋単位で床壁天井の仕上のセットを割り当てて数量を求めます。
ByElementは床壁天井の要素がもつマテリアルの数量を拾います。
まずは簡単にByRoomで求めてみます。
  1. Quantificationタブ>Roombook Extensionパネル>Surface Materials▼>Apply Surface Material to Rooms
    1. 作成した部屋のリストが表示されます。
  2. Material Typeの列で、下の図のようにそれぞれの部屋にHabitable Room-Carpetd、Kitchenを割り当てます。


  3. OK

数量を算出する

  1. Quantificationタブ>Roombook Extensionパネル>Calculate Room Quantities

    • ダイアログボックスが開きます。細かな設定は後ほど説明しますが、まずは規定値のまま使用してみましょう。
    • Export Format : MS Excel
    • Export Template : ENU_Roombook_international_Standard.xlt
    • であることだけ確認して[Calculate]ボタンを押します。
  2. 計算が終わると、平面ビュー上に数字のタグが表示されます。続いて[Export]ボタンを押してください。


  3. Excelが立上り、計算結果が表示されます。
    Excelに結果が出力される


  4. OKでダイアログボックスを閉じます。

どのように拾ったのか?

ワークシート:Wall_Surfacesを見てみましょう。部屋Aと部屋Bのそれぞれの内訳が表示されています。注目ポイントは
  • Surface Material列には仕上が表示されています。この仕上は「部屋に仕上を割り当てる」のステップで指定した仕上です。ちゃんと複層構造で計上されています。例えばWallPaperとPlaster(壁紙と石膏ボード)の組み合わせで拾ってますねー。

  • ID列はこの行がどの部分なのかを示しています。平面図に表示された番号はこのIDです。

  • +/-列で-の部分に注目してください。これは壁から差し引く開口部を示しています。

  • マテリアルごとに面積がまとめられています。

all_Room_Quantitiesシートには各仕上材の面積がまとめられています。

次回:仕上セットを設定する

ByRoomの仕上セットは自作することができます。次回は仕上セットの自作の方法を説明します。

2024年12月28日土曜日

ゆるめの仕上表チュートリアル

集計キーでゆるく仕上表をつくる!

だいぶ前に仕上表のチュートリアルを記事にしましたが、仕上表グループ番号とか整列番号とか設定が細かすぎるのが難点でした。ところがRevit2022から集計キーの適用範囲が広がったので、一度集計キーを使った記事も掲載しましたが、もっとユルめの室内仕上表チュートリアルを作ってみました。ぜひチャレンジしてみてください。

サンプルとするプロジェクトは、Revitに標準添付されているサンプル意匠.rvtです。出来上がった仕上表のイメージは次のようなものです。フィールドの数はとりあえず最小限にしてますが、やり方がわかれば項目を追加していくことができるでしょう。

こんな仕上表を作ってみます。

手順の概略

手順は
  1. 集計キーを作る
  2. 集計キーを部屋に割り当てる
の2ステップです。

集計キーを作る

サンプル意匠.rvtを任意の位置に名前を変えて保存し開いてください。ゆるゆる仕上表作成の第一歩は部屋カテゴリの集計キーを作成することです。集計キーとはインスタンスパラメータの値のセットを作るということです。
  1. 表示タブ>作成パネル>集計▼>集計表/数量

    1. カテゴリリストから部屋を選択
    2. 名前を「室内仕上表」に変更
    3. 集計キーを選択
    4. キー名は「部屋スタイル」のまま
    5. OK
  2. フィールドタブで、プロジェクトパラメータを作成・追加していきます。


    1. 新しいパラメータボタンを押す
    2. 名前:下地仕上 階
    3. データタイプ:文字
    4. パラメータグループ:構成

  3. 同じ要領で床壁天井の下地仕上のパラメータを追加しますが、データタイプをマルチラインテキストにします。
  4. OK
次のような集計表ができます。

ポイント1

下地仕上をマルチラインテキストとしたのは、型に縛られないゆるい入力を可能にするためです。自由に仕上下地を記述します。

ポイント2

今回は手軽さ優先でパラメータはプロジェクトパラメータとしてプロジェクトに挿入しましたが、タグに表示したりODBCデータ出力に対応したい場合は、共有パラメータを作成した上で同じ手順で集計キーに追加します。

下地と仕上の設定

それでは、平面図を見ながら仕上表を作成していきましょう。サンプルの仕上表によると、1階の風除室・エントランスホール・ELVホールは同じ仕上のようです。
  1. 室内仕上表集計表を開きます。
  2. 集計用/数量を修正タブ>行パネル>データ行を挿入 をクリック
    1. 1行追加されキー名は「1」となります。
  3. 下地仕上 階 に 1階 と入力
  4. 下地仕上 名前 のセル(C1)をクリックし、右端に表示される[...]をクリック
  5. 「文字を編集」ダイアログボックスで、
    風除室
    エントランスホール
    ELVホール

    と改行して3行の値を設定してOK。

  6. 下地仕上 床 のセルD1をクリックし、右端に表示される[...]をクリック
  7. 「文字を編集」ダイアログボックスで、床の仕上を入力
    モルタル下地
    花こう岩(t25)
    ジェットバーナー仕上

    と改行しながら床の下地と仕上を入力してOK

エクセルで入力する

この調子で残りの仕上を作成していってもいいのですが、Revitでの入力は少々面倒なので、エクセルを使ってゆるく作成みましょう。まずはフォーマットをCSVに書き出します。
  1. ファイルタブ>書き出し>レポート▶>集計
  2. 任意のフォルダを指定して保存
  3. 集計表を書き出し ダイアログボックスはそのままOK
CSVファイルが出力されたらエクセルで開いてください。そしてエクセルの機能を使って効率的に仕上のデータを作成していきます。セル内改行はおなじみの「ALT+ENTER」です。出来上がったらCSVファイルとして保存します。。。。とはいえ、全部入力していては時間がかかるので、こちらから入力済みのCSVデータをダウンロードしてください。

CSV専用のエディタを使おう

これからCSVファイルの各セルの値を、Revit集計表の「文字を編集」ダイアログボックスにコピぺするのですが、Excelのセル内改行の改行コードと、Revitのマルチラインテキストの改行コードが異なるため、Excelは使えません。
そこで、CSV専用のエディタを使用します。おすすめはフリーソフトの「Cassava Editor」です。こちらからダウンロードしてインストール(杓子定規ですがあくまで自己責任でお願いします。)してみてください。

完成したCSVデータをダウンロードしCassava Editorで開きます。これで準備完了です。

集計キーを増やす

Revitの室内仕上表集計表を開き、データ行を追加します。データ行はあと12行(全部で13行)必要です。
  1. 集計用/数量を修正タブ>行パネル>データ行を挿入 をクリックしキー名が13になるまで追加する

CSVからコピペする

あとは各セルの値をCSVファイルからコピペするだけです。Cassava Editorの場合、セルをクリックした時点でセル内のすべての文字が選択されるので、すぐにCTRL+Cでクリップボードにコピーします。

そしてRevitの当該セルをクリックしB列(下地仕上 階)ならばすぐにCTRL+V、その他はセルの右端の[...]をクリックして、文字列を編集ダイアログボックスにCTRL+Vでペーストします。

後はこの作業を繰り返して、すべての情報を埋めていきます。ここは少々時間がかかりますが頑張ってください。

部屋に仕上を割り当てる

仕上表はこれで完成です。どうでしょう。かなりゆるーく作れたのではないでしょうか?ただしこれは床壁天井の仕上の組み合わせ、仕上のセットを作っただけです。次は部屋にこの仕上セットを割り当てて、部屋自体に仕上の情報を設定します。

  1. プロジェクトブラウザでビュー>建築>10平面>平面図>平面図 1階を開く
  2. ビューのプロパティでビューテンプレートの編集ボタン(10_平面_標準)をクリック
    1. カラースキームのチェックを外しOK

  3. ビューのプロパティ:カラースキームのボタンをクリック

    1. スキームのカテゴリを部屋
    2. 任意のスタイルを一つ選択し、複製ボタン(左下のボタン)をクリック
    3. 名前を「部屋スタイル」としてOK
    4. タイトルを「部屋スタイル
    5. パラメータを「下地仕上 名前
    6. OK
  4. 平面図で部屋:風除室を選択
    1. プロパティ識別情報グループの一番下の部屋スタイルで1を選択

    2. 構成グループの各項目に値が設定されていることを確認します。マウスオーバーするとすべての内容が表示されます。

    3. 平面図でも色がついていることを確認します。

    4. すべての部屋に部屋スタイルを割り当てて、白抜きの部屋がなくなったら完成です。

    5. 同様に2階から上の部屋にも、部屋スタイルを割り当てましょう。

まとめ

集計キーで仕上表を作り、その内容を部屋に割り当てる、というプロセスにより仕上を確実に部屋に関連付けることができます。あとは集計表の体裁を整えてシートに張り付けるだけです。
集計キーに使用できるパラメータが増えたおかげで、仕上表の作成も随分と気楽になりました。前回は5回に及んだチュートリアルが1回で終わってしまいました。
仕上の情報は部屋のパラメータであり床壁天井のジオメトリとの直接の関係はありません。あくまでも仕上の概要を書いているだけですので、設計方針を書くようなものだと考えて、これくらいゆるいほうが実際の設計プロセスにはあいやすいのではないかと思います。

2024年12月21日土曜日

意匠柱の使い道

意匠柱は染まる

意匠柱は意匠壁(インスタンスパラメータ構造に✔が入っていない壁)と自動的に結合し、意匠壁のレイヤを柱内に作成します。

※意匠柱の表面にはペイントを施しています。

今回は意匠壁の便利な特性についてご紹介します。

意匠柱のファミリ

建築テンプレートには意匠柱として「角柱」が含まれています。今回はこのファミリのタイプ「600 x 600mm」を使ってその振る舞いを見てみましょう。

例えば外壁タイル仕上で内壁に断熱材を吹いているような次のような壁タイプがあるとします。


レイヤの状態は次のようになっています。


ここに意匠柱を挿入すると躯体境界から外側/内側のレイヤが、意匠壁の表面に沿って回り込みます。

躯体境界が意匠壁に沿って回り込む

これは躯体境界が膨らむようなイメージで、たとえば次のように壁の躯体境界の外側のレイヤを複数にしてみます。

躯体境界から外側内側のレイヤを増やす

すると、柱の外形はそのままに、柱の外面に沿って躯体境界から外側のレイヤが回り込みます。

躯体境界内のレイヤが複数あると、

あまり期待通りのふるまいをしません。


コーナー部の意匠柱

コーナー部に意匠柱を配置すると、次の図のようにややノイズが残ります。


こんな時はコーナーを形成する壁同士の結合を「留継」にしてみましょう。

  1. 修正タブ>ジオメトリパネル>壁接合部
  2. 壁が交差している付近をクリック
  3. オプションバーで「留め継ぎ」を選択

  4. 選択パネル>修正 をクリック
すると、次の図のようになります。

意匠柱に一工夫

このようにふるまいさえ理解してしまえば大変便利な意匠柱ですが、外径の内側に壁のレイヤが回り込むため、柱のサイズを確保するには意匠柱のファミリに一工夫必要になります。
一例として、角柱ファミリを改造して、外側にインスタンスパラメータで上下左右のふかしが設定できるようにしてみます。

こうするとプロジェクトでは結合する壁の躯体境界から外側の厚さに合わせてふかし厚を決めることができます。

簡略での表示

ビューの詳細レベルを簡略に設定した場合、意匠柱は結合している壁の簡略表現と同じになります。例えば結合されている壁の簡略表現が次のように設定されていると

このようになります。
ところがLGS壁とRC壁のように、簡略表現が異なる壁が混在する場合、このようになります。

柱はRCなのでRC壁と同じように表示したい場合は、自動的に結合しない意匠柱ファミリを使用します。
角柱ファミリを選択し、ファミリを編集してみましょう。そして、ファミリのプロパティ「ジオメトリを自動的に壁と結合」のチェックを外します。


名前を付けて保存で「角柱_非結合.rfa」として保存し、プロジェクトにロードします。
白く染まった意匠柱をいったん削除し、再度同じ位置に「角柱_非結合」を配置し、簡略時の表示を変更すると。。。

手動で結合すれば同じ振る舞いになります。意匠柱はジオメトリの自動結合がオンとオフ、両方のファミリを用意して使い分けるとよいでしょう。