2020年3月22日日曜日

重ね壁

重ね壁

重ね壁は複数の壁を一つのタイプとして取り扱うことができます。例えば図に示すようなALCパネルの外壁で、立ち上がりがRCなどの場合に便利です。壁タイプにスイープやリビールを加えれば、水切りやアングルを追加することもできます。
今回は
・ALCパネル
・RC立上(H1000)
の壁を定義してその使用上の注意点を考えてみます。

重ね壁タイプを定義

まず、重ね壁を構成する個々の壁を定義します。詳細は省略しますが、下の図のような「外壁RC150」「外壁ALC100」の二つの壁タイプを作成してます。
厚さ150mmと100mmの壁を定義
次に重ね壁を作成します。
  1. 建築テンプレートで新規プロジェクトを作成
  2. プロジェクトブラウザ>ファミリ>壁>重ね壁
  3. 任意のタイプを右クリック>複製
  4. 複製されたタイプを右クリック>名前変更でRC150+ALC100とする。
  5. 作成した重ね壁タイプをダブルクリックしてタイププロパティダイアログボックスを表示
  6. 構造の編集ボタンをクリックしアセンブリ編集ダイアログボックスを表示
    1. プレビューボタンを押して断面図を表示
    2. 1行目にALC100、2行目にRC180
    3. 1行目を選択しておいて可変をクリックし、高さを変数に設定。
    4. 2行目の高さを1000mm
    5. オフセットを躯体面外部に設定し、断面で外面合わせに変更されたことを確認する。
    6. OK
      アセンブリ編集ダイアログボックス
プロジェクトで重ね壁を壁コマンドで作成すると、一度に上下の壁を作成できます。
重ね壁

アングルを入れる

次にALCとRCの間に定規アングルとしてL-50x50x6をいれて、外側にシーリング材を入れてみます。重ね壁自体にはスイープを挿入することはできないので、RC150の天端を切り欠いて、アングルとシールの壁スイープを設定します。

必要なプロファイル

以下のプロファイルを用意します。

定規アングル用-p等辺山形鋼:50x50x8

シーリング用 - p矩形(第3象限):10x10
RC壁天端切り欠き用 - p矩形(第4象限):150x10

RC壁タイプの編集

プロファイルを準備したらRC150の壁タイプを編集します。

壁リビール

タイプ編集>構造の編集で、プレビューボタンを押してプレビューを表示します。
ビューを断面図に切り替えて壁リビールをクリックし、以下のように設定します。
壁リビールの設定
これにより、プレビュー画面で壁の天端が切り欠かれたことを確認します。

壁スイープ

同様に壁スイープボタンを押して、以下のように二つのプロファイルを設定します。
壁スイープの設定
シーリング
側面:外部
基準オフセット:0
側面オフセット:0
定規アングル
側面:外部
基準オフセット:-10
側面オフセット:-108(ALC厚さ100+アングル厚8)

これで、重ね壁も更新されて以下のようになります。
プロファイルでアングルを追加した重ね壁

2020年3月14日土曜日

ロード時にボイドで切り取り

ホスト以外を切り取る

ホストではない要素を切り取るには?
ドアや窓は壁にとりつくので、原則としてとりつく壁に開口を開けるようになっています。しかしとりつく壁以外にも開口を開けたい場合があります。たとえば
  • 床にヌスミをいれたい
  • 防火扉
  • コーナーサッシ
などなど。ボイドの働きを見てみましょう。

防火戸のファミリをつくる

防火戸はホストとなる壁以外の壁にも戸袋を作成する必要があります。こんなときこの「ロード時にボイドで切り取り」機能が役に立ちます。今回はこまかな納まりはさておき、ボイドの働きに着目してください。
まず、建築テンプレートで新規プロジェクトを作成し、下の図のように床と壁とドアを作成してください。ドアは規定値の片開き:w900h2000です。
では、これを防火戸に改造してみましょう。

  1. 配置したドアを選択し、モードパネル>ファミリを編集
  2. ビュー>平面図>基準レベルを開きます。
  3. 扉パネルとハンドルを削除します。簡略表示用、標準表示用にフォームや塗りつぶし領域など複数の要素があるので慎重にすべて削除してください。
    パネル関連の要素をすべて削除
  4. 下の図のように参照面と寸法を作成して、寸法に既存のパラメータをつける。
    参照面とパラメータを作成
  5. 立面図(立面図1)>右を開く
  6. 作成>フォームパネル>押し出し
  7. 作業面に「右」を指定してOK。
  8. 壁に埋め込むパネルの外形線をスケッチして、モードパネル>✔
  9. 平面図>基準レベルで厚さを調整し参照面にロック。サブカテゴリをパネルに指定
  10. 同様に枠を作成し、サブカテゴリをフレーム/マリオンに
  11. 立面図(立面図1)>右を開く
  12. 作成>フォームパネル>押し出し
  13. 作業面に「右」を指定してOK。
  14. 作成した枠の外側、上側、壁の外側(参照面名:外部)、レベルで矩形を作成してモードパネル>✔
  15. 形状ハンドルで厚さを調整して参照面にロック。
  16. ソリッド/ボイドプロパティでボイドを選択。
    ボイドに指定
  17. 内側の壁面にある、「開口断面」を選択して削除。
    1. 開口部断面とボイドは共存できません。
    2. ボイドを使用する場合は開口部断面を削除して、代わりに同等のボイドを作成します。
      開口部断面を削除
  18. 立面図(立面図1)>内部を開く
  19. 作成タブ>フォームパネル>押し出し
  20. 作業面に参照面外部を指定
  21. ドア枠の外側の参照面にロックしながら矩形をスケッチ。
    枠の外側にロック
  22. モードパネル>✔
  23. 平面図>基準レベルで厚さを調整する
    1. 位置合わせまたは形状ハンドルをドラッグして、参照面外部内部にロック
  24. 16と同様の手段でボイドに変更
  25. 修正タブ>ジオメトリパネル>切り取り
  26. 壁→ボイドの順番にクリックして壁をくりぬく。
  27. ファミリのプロパティ「ロード時にボイドで切り取り」に✔
  28. プロジェクトにロードし「現在のバージョンを上書き」を選択

ホストではない壁を切り取る



  1. 下の図のように壁をもう一つ作成
  2. 位置合わせで埋め込み側のパネル面を壁面に合わせる。
    1. エラーが出ますが無視してください。
    2. この時点ではたての壁は切りかかれていません。
      まだ戸袋はできていない
  3. 修正タブ>ジオメトリパネル>切り取りで壁→ドアの順でクリック。
ロード時にボイドで切り取りをチェックしても、明確に何をどれで切り取るかを指定する必要があります。
この方法を使うとホストの壁以外でも切り取ることができます。また、壁に限らず、床にヌスミを入れることももちろん可能です。たとえば掃き出し窓も、一般には床を切り欠くことはできませんが・・・
床に水切が食い込んでいる
同様の手法でボイドを仕込んで、切り取りを行うと
床を切り取る
のようになります。





2020年3月7日土曜日

破線の塗潰し領域

PATファイル

塗りつぶし領域はパターンファイル(*.pat)で色々なパターンが作成できます。今回は下の図のような破線のハッチングを作成してみましょう。

基本情報はこちら

patファイルの基本的な構成はこちらに示しています。今回は「製図」のパターンを作成します。

簡単な破線パターン

まずは単純な破線パターンから作成してみます。

  1. メモ帳を開く
  2. ファイル名を任意につける。ただし、拡張子は.pat、文字コードはANSIを指定する。
    拡張子はpat、文字コードはANSI
  3. 先頭行にmm単位で作成することを示すために「;%UNITS=MM」と記入。
  4. 2行目以降に以下のように記入して上書き保存。
    1. *パターン1
    2. ;%TYPE=DRAFTING
    3. 0,0,0,0,1,1,-1
  5. Revitで管理タブ>その他設定>塗り潰しパターン
  6. 製図を選択して新規作成
  7. カスタムを選択して、参照をおして、作成したpatファイルを読み込む。
    カスタム→参照ボタンで作成したpatを読み込み
  8. OK
以上でパターンの登録ができたので、これを使って塗りつぶし領域を作成してみてください。
水平の破線パターンn
ここでポイントとなるのは前出4-3のデータの書き方です。以下にヘルプがあります。
これによると
角度,原点X,原点Y,移動量X,移動量Y,ペンダウン距離,ペンアップ距離
となります。
0,0,0,0,1,1,-1の内訳は
0度(水平)で、原点は(0,0)、次の線の原点への移動ベクトルは(0,1)で、線を1mm書いたら1mm開ける
という意味になります。

45度傾ける

では45度傾けてみます。patファイルに以下のように追記します。これはパターン1の先頭の0を45に変えただけす。

*パターン2
;%TYPE=DRAFTING
45,0,0,0,1,1,-1

同じ手順で読み込んでみると下の図のようになります。
45度傾けたパターン
さらに移動ベクトルを(1,1)とすると
*パターン3
;%TYPE=DRAFTING
45,0,0,1,1,1,-1
次のようになります。
横にそろっている
この移動距離の考え方ですが、45度傾いているので、傾いた状態でΔX,ΔYを考えます。
移動距離は角度を考慮して

直線と組み合わせる

直線と組み合わせるにはもう一行追加します。一本置きに実線と破線を繰り返すのでそれぞれの移動ベクトルは(2,2)になります。注意するべきは2本目の原点です。

*パターン4
;%TYPE=DRAFTING
45,0,0,2,2,1,-1
45,1.41421256,0,2,2

青字で示したのは直線部分(末尾の1,-1を省略しているので実線とみなされます)で、原点が(√2,0)であることを示しています。これは、移動距離同様に45度傾けた状態での原点で、以下の図のような解釈になります。
1mm間隔なので、原点は√2,0になる
この結果次のような塗り潰しパターンが出来上がります。
破線と直線のパターン

2020年3月1日日曜日

カテゴリが許可する場合?

カテゴリが許可する場合って・・・

ファミリを作成するとき、フォームの表示方法を以下のダイアログボックスで選択することができます。
4番目のオプションに注目!
このダイアログボックスの4番目の「平面図/天井伏図で切り取り時(カテゴリが許可する場合)」とは、文字通り

フォームが平面図または断面図で切断された場合に表示されるかどうか?

を設定します。この働きを考えてみます。

許可してくれるカテゴリは?

このチェックボックス、いつでも使えるわけではありません。そもそも切断可能なロード可能ファミリのカテゴリは次の11カテゴリに限られています。
  • 手すり子
  • 造作工事
  • ドア
  • 外構
  • 構造柱
  • 構造基礎
  • 構造フレーム
  • カーテン ウォール パネル
  • 一般モデル
また、このチェックボックスが使えるのは太字で示したカテゴリだけです。例えば一般モデルでは、以下のように表示されても選択することはできません。
一般モデルカテゴリの場合は強制的にチェックされている
一般モデルカテゴリの場合、フォームは平面図/天井伏図で切断されたときに常に切断面が表示されます。

どのような働きがあるのか?

造作工事(旧名:収納家具、英語版:Casework)のカテゴリで試してみましょう。造作工事の場合はこのチェックボックスは自由にオンオフ可能です。
下の図のようなフォーム一つでできている単純な立方体のファミリを作成し、「平面図/天井伏図で切り取り時(カテゴリが許可する場合)」にチェックをいれたファミリと、チェックを外したファミリを用意します。
立方体(600X600X600)のファミリを造作工事のカテゴリで作成
平面図のビュー範囲は以下のように設定します。
断面はFL+1200
では実験してみましょう。

①ビュー断面以下にある場合

断面
平面

②ビュー断面の位置にある場合

断面
平面

③ビュー断面より上にある場合

断面

平面
平面図/天井伏図でファミリが切断されたときにフォームを表示するには、「平面図/天井伏図で切り取り時(カテゴリが許可する場合)」かならずチェックを入れなければなりません。
ただし、ここには切り取り時にフォームの切断面を表示するとは書かれていません。ここがポイントです。

切断時に切断面が表示されているとは限らない

フォームは平面図/天井伏図では基本的に見え掛りで表示されます。平面図/天井伏図で切り取り時(カテゴリが許可する場合)にチェックすることで、初めてビューで切断されたときに限って表示されます。
ところが、カテゴリによっては切断されていても断面が表示されず常に見え掛りで表示されるものがあります。
上記の②の場合、ビューの表示を下の図のように、見え掛りは青、断面は赤で上書きしてみます。
見え係は青、断面は赤
すると
なんとビューの断面で切り取られているにも関わらず見え掛りが表示されているのです。このため下記ダイアログには、切り取り時に切断面を表示するとは明示していないわけです。

となると造作工事のフォームの平断面は表示できないのか?という疑問がわきます。そうです、表示できません。ですからいくら凝った形状をフォームで作っても、平断面を表示することはできないのです。

かわりに「平面図/天井伏図で切り取り時(カテゴリが許可する場合)」をオフにして、シンボル線分で切断時の様子を描画することになります。このときシンボル線分のサブカテゴリを造作工事[切り取り]を使用します。
サブカテゴリを[切り取り]に指定すると
平面図では切断面として表示される
平面図/天井伏図での切り取り時(カテゴリが許可する場合)とは、言い換えれば

切断したときは特別な表示をシンボル線分で作成しておくので、フォームは非表示にしておきたい。

といったニーズにこたえる機能なのです。こんなところからもRevitの平面図は単に切断して下を見ているのではない、ということがわかります。