2025年12月20日土曜日

モデルコーディネーション基礎(3/3)~指摘事項編

問題の処理は「指摘事項」を使って

Model Coordinationでは干渉チェックで見つかった問題点を「指摘事項」として マークしていきます。と同時に、問題ではない結果については「非指摘事項」としてマークします。

非指摘事項から

次の例では構造フレームにエルボ、スリーブ、および3本の配管が干渉しています。

干渉の様子

このうち、二つの配管はスリーブが設けられているので問題はない、となった場合これらを「非指摘事項」として登録します。

問題があるエルボと配管タイプを除いてチェックして、画面下部の[非指摘事項]をクリックします。

問題のない要素をチェックして[非指摘事項]をクリック

件名(自由記述)、理由(リストから選択)、コメント(自由記述)を設定して[OK]

件名は後から検索しやすい名称とする

干渉部位画面に戻るので、同じ干渉グループを選択すると、非指摘事項に指定した項目が除外されていることがわかります。

非指摘事項の項目が除外されている

非指摘事項の作成は指摘事項の作成と同様に重要で、こうした干渉のノイズをどんどん排除することで、問題点を正確に把握できるようになります。

非指摘事項を復活させることはできるのか?

ビューアの右上のXをクリックし閉じて、干渉部位をクリックすると、画面左上の[完了]タブをクリックします。


ここに非指摘事項がリストアップされています。復活させたい項目を選択し、[再アクティブ化]をクリックすることで、元に戻すことができます。


指摘事項の作成

先ほどの例で、残りの配管とエルボについて指摘事項を作成します。

  1. 構造フレーム、エルボ、配管タイプに✔
  2. +指摘事項を作成

  3. 【案外と重要】Clashを選択
  4. 【とても重要】画面を拡大して慎重に配管またはエルボがハイライトされた状態でクリックしてピンを打ちます。問題を解決する側のモデルに対してピンを打つ、というところがポイントです。

  5. 画面右側に指摘事項パネルが開くので、必要事項を設定する。特に「担当者」と「監視者」は重要です。「監視者」はこの問題を把握すべきメンバー(例えばこの場合ならば構造設計者と設備設計者です)、「担当者」は問題解決の責任者です。

指摘事項はピンを打った瞬間に保存されますので、とくにOKボタンなどを押す必要はありません。

指摘事項の確認

このようにして問題点を指摘事項として登録します。作成した指摘事項は画面左側の[指摘事項]をクリックすることで確認できます。
Model Coordinationの指摘事項一覧

Model Coordinationで作成した指摘事項は、Docsでも確認できます。
Docsの指摘事項一覧

タイプが「Clash」になっていることに注目してください。Docsの指摘事項には様々な指摘事項が並ぶので、前回のステップ3で指定したタイプにより分類することができます。

あとは、指摘事項のステータスを管理しながら、[完了]になるまで状況を追跡することができます。Webベースのアプリなので誰でも問題点にアクセスでき、管理状況を把握することができるのは大きなメリットです。

2025年12月13日土曜日

モデルコーディネーション基礎(2/3)~検査編

モデル詳細

データアップロード直後は、Revitの内部原点(0,0,0,)で各モデルが位置合わせされた状態です。必要であれば、アップロード後にモデルを移動して位置合わせをします。
  1. モデル詳細をクリック
  2. 移動したいモデルを選択し、ビューアで開くをクリック

  3. 位置変換をクリック
  4. モデル詳細からモデルを選択
  5. X、Y、Zの移動距離と回転角度を入力
    この例では構造モデルを100mm上方に移動している

  6. [位置変換を保存]をクリック
  7. 右上に次のようなメッセージが表示されます。

  8. 右上のXをクリックし、モデル詳細に戻ります。
新たに干渉チェックが開始され、終了すると移動が完了したモデルには移動アイコンが表示されます。
移動アイコンが表示される

ヒント

  • 移動量はあらかじめRevitで測定しておくことをお勧めします。
  • 2で基準となるモデルを選択し、5で[点から点]を使って画面上で指定することもできますが、事前に移動量を数値で把握しておいた方が確実です。
  • 移動量はメートル単位です。ミリではありませんので注意してください。
  • 真北を設定したモデルは回転しています。回転の値を0にすることをお勧めします。

チェックビューの作成

干渉チェックの目的別のビューを作成して保存することができます。例えば構造フレームとダクト・配管との干渉をチェックするならば
  • 構造フレーム
  • ダクト・ダクト継手・ダクト付属品
  • 配管・配管継手・配管付属品
のみを表示したビューを作成しておくと、干渉項目が絞り込まれて便利です。

  1. モデル詳細で構造全体と設備全体をチェックし、[ビューアで開く]をクリック

  2. モデルブラウザをクリックし、基本フィルタを編集をクリック

  3. 任意のプロパティを検索して追加します。お勧めの設定としては「分野」「カテゴリ」「ファミリ」「タイプ」の順です。
    フィルタを追加する

  4. [更新する]を押すと、次の図のように指定したプロパティが表示されます。

  5. 分野から構造、配管、機械
  6. カテゴリをクリックし、以下のカテゴリのみオンにします。
    1. 構造フレーム
    2. ダクト・ダクト継手・ダクト付属品
    3. 配管・配管継手・配管付属品
  7. [ビューを保存]をクリックし、件名を「構造フレームとダクトと配管」として[ビューを保存]をクリックb

  8. 右上の×をクリック
  9. 左側のペインから[ビュー]を選択すると、保存したビューにアクセスできます。

チェックビューの作成にはこのフィルタの仕組みを理解することが非常に重要です。

干渉部位

干渉部位を確認するには、「何が」「何に」干渉しているかを調べたいかを指定する必要があります。前者が選択肢A(単一指定)、後者が選択肢B(複数指定可)です。
  1. [ビュー]をクリックし、一覧から調査したいビューをクリック
  2. [干渉部位]をクリックします。
  3. 選択肢Aに構造モデル、選択肢Bに設備モデルを指定します。
選択肢Aと選択肢Bを指定
すると、干渉している箇所が一覧に表示されます。一覧には選択肢Aに選択肢Bの干渉オブジェクトがリストアップされます。
選択肢Aの要素に干渉している選択肢Bの要素

カテゴリごとにグルーピングする

干渉要素のリストは初期値ではオブジェクトごとにグルーピングされています。これをカテゴリとオブジェクトでグルーピングしてみます。
  1. 干渉のグループ化基準のオブジェクト名をクリック

  2. プロパティを追加リストからカテゴリの+をクリックしてグループ化の順序リストに追加し、ハンドルをドラッグして最上位とします。

  3. 更新すると、リストが選択肢Aの構造モデルのカテゴリ+オブジェクト名でグルーピングされます。
  4. 任意の構造フレームのアイテムを展開すると、干渉している設備の要素がリストアップされます。
  5. またチェックを入れると、当該要素が強調表示されます。

干渉チェックを保存とは?

選択肢A、選択肢B、干渉のグループ化基準などの設定に名前を付けて保存します。

  1. 干渉チェックを保存をクリック
  2. 名前を設定して[保存]

  3. 一番上のリストに名前が表示されていることを確認してください。次回からはこのリストから選択することができます。

調査対象をレベルで絞り込む

干渉している要素をレベルで絞り込んでみましょう。
  1. [レベル]をクリックします
  2. [次からレベルを表示]で、レベル情報を取り出すビューを選択します。
  3. 目的のレベルを選択します。(解除するにはもう一度選択したレベルをクリックします。)
    レベルを指定してレベル間の要素のみとする

  4. [干渉部位]をクリックし、干渉を検査します。


注意:レベルでの切断はビューに保存されません。

レベルで絞り込むことでさらに範囲を限定して調査を効率的に進めることができます。次回は調査で見つかった不具合を管理するプロセスについて説明します。

2025年12月6日土曜日

モデルコーディネーション基礎(1/3)~準備編

Model Coordination

Autodesk Construction Cloud(以降ACC)のModel Coordinationを使うためのコツを解説します。

モデルコーディネーションを使いこなそう!

Model Coordinationは言ってみれば「自動干渉チェック」です。Docs上の指定したフォルダ内にある複数のデータ(rvt,ifc,dwg,nwcなど)同士の干渉を総チェックする仕組みです。次の2ステップです。

  1. 干渉チェック用データの準備
  2. 統合モデル空間の準備

干渉チェック用データの準備

まず、Revitのファイルを開き、干渉チェックの対象となる要素を表示した3Dビューを作成します。干渉チェックの対象はファイルではなく3Dビューであることがポイントです。例えば

  1. 対象となるカテゴリだけを表示した3Dビュー
  2. 断面ボックスを使って対象となる範囲だけを表示した3Dビュー

などを作成しておきます。例えば・・・・

  • 意匠モデルの例:全体を表示したビュー
    意匠全体を表示したビュー


  • 意匠モデルの例:区画壁のみを表示したビュー
    区画壁のみを表示したビュー

  • 構造モデルの例:構造体全体を表示したビュー
    構造全体を表示したビュー

  • 設備モデルの例:電衛空全体を表示したビュー
    MEP情報のみを表示したビュー

などを用意します。

ヒント

  • Model Coordinationでもプロパティなどのルールによって対象要素を絞り込むことはできるが、あらかじめ操作に慣れたRevitでビューを用意しておくとよい。
  • Revitであればルールに基づかない任意の要素だけを表示したビューが作成できる利点がある。

その他の注意事項

ビューの名前をわかりやすく!

作成した干渉チェック用ビューにはわかりやすいビュー名を付けましょう。例えば、「干渉チェック_」を接頭するというようにしてください。

トリミング領域は使わない!

ビューのプロパティ「ビューをトリミング」はオフにしてください。オンにしておくとモデルコーディネーション上でトリミング領域外の要素はゴースト表示されますが、干渉検査の対象にはなりません。誤解しやすいのでオフにしておくのが無難です。

ビューをトリミングはOFFが推奨

IFCについて

IFCも干渉チェックの対象です。ヘルプにはけっこう細かな制限が書いてあるのですが、IFCであればだいたい問題はないようです。AVEVA E3D Design(3.1.8.0 以降)から書き出されたIFCも対象なので、プラント建屋を設計している方には朗報ですね。

パブリッシュ設定

作成した干渉チェック対象の3Dビューをパブリッシュ設定します。これが重要で、ビューを作成しただけでは干渉チェックの対象とはなりません。必ずパブリッシュ設定をしておきます。

セット00_ModelCoordinationを作成し、3Dビュー:干渉チェック_全体のビューを含めている例。この状態で保存して閉じる

統合モデル空間の準備

Docsでフォルダを作成

ACCで対象となるプロジェクトを開き、製品ピッカーでDocsに切り替えます。

Docsをクリック

そして、干渉チェックの作業場となるサブフォルダを作成します。

干渉チェックの作業場(サブフォルダ)を作成

このフォルダの中に配置するデータが干渉チェックの対象となります。特別なことは必要なく、単純に任意の場所にフォルダを作成してください。

そして準備したファイルを作成したフォルダに配置します。このときリンクファイルは特に必要ありません。

ファイルをアップロード
それぞれクリックして、干渉チェック用のビューがパブリッシュされていることを確認してください。

パブリッシュの状況を確認する


統合モデル空間の指定

統合モデル空間とは要するに干渉チェック対象データが配置されているフォルダのことです。次の手順で作成したフォルダを統合モデル空間に指定しましょう。

  1. 製品ピッカーをModelCoordinationに切り替えます。

  2. [設定]をクリックし、[統合モデル空間を作成する]をクリック。

  3. 名前を指定し、統合モデル空間のメインフォルダを選択で、作成したフォルダを指定します。

  4. [干渉チェックをオン]をクリックし、右下の[作成]ボタンをクリックします。

干渉チェックの結果を見る

以上の手順で干渉チェックが自動で行われます。ModelCoordinationの干渉部位をクリックすると結果が表示されます。
[干渉部位]で状況を確認

この表には縦横軸にフォルダ内のパブリッシュされてすべてのビューが表示されて、それぞれのビューで干渉している箇所を示しています。この数字のセルをクリックすると・・・
干渉チェック結果

干渉チェックの結果が表示されます。

次回はこの干渉チェック結果を検証するときのコツについてお伝えします。

2025年11月29日土曜日

地下躯体と地形ソリッド

地下躯体と地形ソリッド

基礎・基礎梁・敷砂利と地形ソリッドの取り合いについて考察してみます。地形ソリッドと躯体をどのように関係づけるとベストなのか?目標は次のような断面になることです。

躯体と地形ソリッドの関係

2025から掘削という機能が加わりましたが、掘削を使用すると敷砂利が地形ソリッドに食い込むようなモデルにはなりません。

捨てコンで掘削すると隙間ができてしまう

もっともお手軽な方法は

  1. ボイドのみのインプレイスファミリで地形ソリッドを大まかに切取り
  2. 躯体と捨てコンで地形ソリッドを切り取り

の2段階で"切り取り"を行う方法です。

事例

次のような一部埋め戻しのある地下躯体と地形ソリッドを作成する手順を紹介します。

一部埋め戻しのある地下躯体
捨てコン・埋め戻し・地下躯体の関係に注目

底板の下端は設計GL-2100、フーチングの下端はGL-2400です。

インプレイスのボイドで地形ソリッドを切り取る

  1. 地下躯体が表示されている平面ビューを開きます。ワイヤーフレーム表示にすると躯体が確認しやすくなります。
  2. 建築タブ>作成パネル>コンポーネント▼>インプレイスを作成
  3. カテゴリは地形ソリッド
  4. 名前は掘削1とします
  5. 作成タブ>フォームパネル>ボイドフォーム▼>押し出し
  6. 掘削する範囲をスケッチします。

  7. 作業面パネルで設定▼>作業面を設定でレベル:設計GLを選択
  8. プロパティウィンドウで押出 終端を-2100(底板の下端のレベル)、押出始端を0より大きな値にします。
  9. モードパネル>✔
  10. ジオメトリパネル>切り取り
  11. 地形ソリッド→ボイドの順でクリックし、地形ソリッドをボイドを関連付ける
  12. インプレイスエディタ>✔モデルを終了
この時点で大部分の地形ソリッドがくり抜かれて地下躯体が現れます。
地下躯体が露出する

地下躯体と捨てコン敷砂利で地形ソリッドを切り取る

まだ、一部の基礎、柱、捨てコンは地形ソリッドと干渉しています。切取りを使って仕上げます。
  1. 修正タブ>ジオメトリパネル>切り取り
  2. オプションバーの複数の切断をチェック
    複数の切断

  3. 地形ソリッドを選択し、捨てコン、基礎、柱など地形ソリッドから切り取りたい要素を連続して選択します。断面や3Dビューで確認しながら丁寧に選択します。
以上の2段階の切り取りにより、地下躯体と地形ソリッドがきれいにとりあいます。
地形ソリッドと地下躯体

使用するのは切り取りだけなので、Revit2024でもこの手法が使えます。Revit LTでインプレイスファミリが使えない場合は、ボイドのみの矩形のファミリを組み合わせて使用するとよいでしょう。